潜水士

2018年(平成30年)1月~6月の潜水士試験の過去問の解説

2018年の過去問を解いて潜水士試験一発合格を目指そう!!

潜水士 トップ > 潜水士試験過去問と解説 >2018年1~6月過去問と解説

潜水業務

問1 空気をゲージ圧力0.2 MPaに加圧したとき、窒素の分圧(絶対圧力)に最も近いものは次のうちどれか。
(1)約0.08MPa
(2)約0.16MPa
(3)約0.20MPa
(4)約0.24MPa
(5)約0.32MPa

空気中の窒素はおおよそ79%になります。そのため、例えば1MPaの空気の窒素分圧は0.79MPaになります。
ゲージ圧0.2MPaは絶対圧では0.3MPaになります。(ゲージ圧には大気圧0.1MPaが含まれていません)
窒素分圧は0.3MPa×0.79(窒素79%)=0.237MPa
答えは(4)


問2 体積600㎤で質量が400gの本片が下の図のように水面に浮いている。この木片の水面下にある部分の体積は約何㎤か。
物体の浮力

(1)300㎤
(2)325㎤
(3)350㎤
(4)375㎤
(5)400㎤

浮力は押しのけられた液体の体積に等しくなります。
水は1g=1㎤になりますので、この木片は400gの体積分が沈んでおり、その体積は400㎤になります。
答えは(5)


問3 気体の性質に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)ヘリウムは、密度が極めて大きく、他の元素と化合しにくい気体で、呼吸抵抗は少ない。
(2)窒素は、化学的に安定した不活性の気体であり、高圧下でも麻酔性などの問題は生じない。
(3)二酸化炭素は、空気中に0.3~0.4%程度の割合で含まれている無色・無臭の気体で、人の呼吸の維持に微量は必要なものである。
(4)酸素は、無色・無臭の気体で、生命維持に必要不可欠なものであり、空気中の酸素濃度が高いほど人体に良い。
(5)一酸化炭素は、無色・無臭の気体で、物質の不完全燃焼などによって発生する。

ヘリウムは密度が小さい気体です。(密度が小さい=軽い気体です。風船に入っている気体はヘリウムで空気より軽いため空気に浮きます。)
窒素は高圧化で麻酔作用があり、窒素酔いの原因になります。
二酸化炭素の空気中の濃度は0.03~0.04%前後です。
酸素濃度が高すぎる場合には酸素中毒になる可能性があります。
答えは(5)


問4 窒素の水への溶解に関する次の文中の    内に入れるA及びBの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「温度が一定のとき、一定量の水に溶解する窒素の A は、その窒素の圧力に B 。」
   A     B
(1)質量  かかわらず一定である
(2)体積  反比例する
(3)質量  反比例する
(4)体積  比例する
(5)質量  比例する

液体に溶解する気体の体積は、分圧にかかわらず一定です。
液体に溶解する気体の質量は、分圧に比例します。
「質量は比例」して、「体積は一定」と覚えましょう。
答えは(5)


問5 水中における光や音に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)水中では、音に対する両耳効果が減少し、音源の方向探知が困難になる。
(2)水は空気に比べ密度が大きいので、水中では音は空気中に比べ遠くまで伝播する。
(3)水中では、太陽光線のうち青色が最も吸収されやすいので、物が青のフィルターを通したときのように見える。
(4)濁った水中では、オレンジ色や黄色で蛍光性のものが視認しやすい。
(5)澄んだ水中でマスクを通して近距離にある物を見る場合、実際の位置より近く、また大きく見える。

水中では赤色が最も吸収されやすく、青色は吸収されにくい性質があります。
青色が吸収されにくく青色の光が多く届くため、青のフィルターを通したときのように見えます。
答えは(3)


問6 潜水の種類及び方式に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)全面マスク式潜水は、レギュレーターを介して送気する定量送気式の潜水である。
(2)ヘルメット式潜水は、金属製のヘルメットとゴム製の潜水服により構成された潜水器を使用し、操作は比較的簡単で、複雑な浮力調整が必要ない。
(3)ヘルメット式潜水は、応需送気式の潜水で、一般に船上のコンプレッサーによって送気し、比較的長時間の水中作業が可能である。
(4)自給気式潜水は、一般に閉鎖回路型スクーバ式潜水器を使用し、潜水作業者の行動を制限する送気ホースなどが無いので作業の自由度が高い。
(5)全面マスク式潜水は、水中電話の使用が可能である。

全面マスク式はレギュレーターを介して送気する「応需要送気式」です。(定量送気式とは常に空気が出続ける潜水器で、応需要式は吸った時だけ空気が出る潜水器になります。
ヘルメット式潜水はスーツ内に入る空気が多いため、浮力調整が難しくなります。
ヘルメット式潜水は定量送気式の潜水です。
自給式潜水は、一般的に開放型スクーバが一般的です。開放型は吐いた空気が水中に排出される潜水器で、閉鎖型は吐いた空気が水中に排出されない潜水器です。リブリーザーと呼ばれる閉鎖型回路もありますが一般的ではありません。
答えは(5)


問7 潜水業務における潮流による危険性に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)潮流の速い水域での潜水作業は、減圧症が発生する危険性が高い。
(2)潮流は、千潮と満潮がそれぞれ1日に通常2回ずつ起こることによって生じる。
(3)潮流は、湾口、水道、海峡などの狭く、複雑な海岸線をもつ海域では弱いが、開放的な海域では強い。
(4)上げ潮と下げ潮との間に生じる潮止まりを憩流といい、潜水作業はこの時間帯に行うようにする。
(5)潮流の速い水域でスクーバ式潜水により潜水作業を行うときは、命綱を使用する。

潮流は、湾口、水道、海峡などの狭く、複雑な海岸線をもつ海域で強くなり、開放的な海域で弱くなります。
答えは(3)


問8 潜水墜落又は吹き上げに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)潜水墜落は、潜水服内部の圧力と水圧の平衡が崩れ、内部の圧力が水圧より低くなったときに起こる。
(2)潜水墜落では、ひとたび浮力が減少して沈降が始まると、水圧が増して浮力が更に減少するという悪循環を繰り返す。
(3)ヘルメット式潜水では、潜水作業者が頭部を胴体より下にする姿勢をとり、逆立ちの状態になってしまつたときに潜水墜落を起こすことがある。
(4)吹き上げは、ヘルメット式潜水のほか、ドライスーツを使用する潜水においても起こる危険性がある。
(5)吹き上げ時の対応を誤ると、逆に潜水墜落を起こすことがある。

ヘルメット式潜水で逆立ちの姿勢になると、スーツ内の空気を排出することが出来ないため、吹き上げの原因になります。
答えは(3)


問9 水中拘束又は溺れに関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)水中拘束によって水中滞在時間が延長した場合であっても、当初の減圧時間をきちんと守って浮上する。
(2)送気ホースを使用しないスクーバ式潜水では、ロープなどに絡まる水中拘束のおそれはない。
(3)スクーバ式潜水では、些細なトラブルからパニック状態に陥り、正常な判断ができなくなり、くわえている潜水器を外してしまって溺れることがある。
(4)水が気管に入っただけでは呼吸が止まることはないが、気管支や肺に入ってしまうと窒息状態になって溺れることがある。
(5)ヘルメット式潜水では、溺れを予防するため、救命胴衣又はBCを必ず使用する

水中滞在時間が延長した場合は、実際に潜った時間で減圧所間を計算しなおす必要があります。
スクーバ式潜水でも水中拘束の危険性はあります。
水が気管に入っただけで反射的に呼吸が止まることがあります。
ヘルメット式潜水では、救命胴衣又はBCは使用しません。救命胴衣又はBCを使用するのはスクーバ式潜水になります。
答えは(3)


問10 特殊な環境下における潜水に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)河川での潜水では、流れの速さに特に注意する必要があるので、命綱を使用したり、装着するウエイト重量を増やしたりする。
(2)河口付近の水域は、一般に視界が悪いが、降雨により視界は向上するので、降雨後は潜水に適している。
(3)冷水中では、 ドライスーツよりウエットスーツの方が体熱の損失が少ない。
(4)汚染のひどい水域では、スクーバ式潜水が適している。
(5)山岳部のダムなど高所域での潜水では、海面より環境圧が低いため、通常よりも短い減圧時間で減圧することができる。

河口付近は降雨により視界が悪くなり、降雨後の潜水は適しません。
ドライスーツよりウエットスーツの方が耐熱の損失は大きくなります。(寒くなりやすい)
スクーバ式潜水は顔や口が水に触れているため、汚染のひどい水域では適しません。
水中と陸上の気圧の差が減圧症の原因です。環境圧が低い高所域での潜水では、減圧症のリスクが高いため減圧時間を長くする必要があります。
答えは(1)

送気、潜降及び浮上

問11 潜水業務に用いるコンプレッサーなどに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)コンプレッサーの機能・性能を保持するためには、原動機とコンプレッサーとの伝動部分をはじめ、冷却装置、圧縮部、潤滑油部などについて保守・点検の必要がある。
(2)潜水作業船に設置する固定式のコンプレッサーの空気取入口は、機関室の外に設置する。
(3)ストレーナーは、コンプレッサーに吸入される外気をろ過し、ゴミなどの侵入を防ぐための装置である。
(4)コンプレッサーの圧縮効率は、圧力の上昇に伴い増加する。
(5)スクーバ式潜水のボンベの充填に用いる高圧コンプレッサーの最高充填圧力は、一般に20MPaであるが30MPaの機種もある。

コンプレッサーの圧縮効率は、圧力が上昇すると低下します。
答えは(4)


問12 毎分20Lの呼吸を行う潜水作業者が、水深10mにおいて、内容積10L、空気圧力19MPa(ゲージ圧力)の空気ボンベを使用してスクーバ式潜水により潜水業務を行う場合の潜水可能時間に最も近いものは次のうちどれか。
ただし、空気ボンベの残圧が5 MPa(ゲージ圧力)になったら浮上するものとする。
(1)35分
(2)40分
(3)55分
(4)65分
(5)70分

19MPaから潜水を開始し5MPa残すため、使用できるタンク圧は19MPa-5MPa=14MPaになります。
14MPa≒140気圧になりますので、140倍に圧縮された空気が入っており、1気圧下での140倍の体積の空気が入っている事になります。10L(タンク容積)×140倍=1400Lの空気が使用できることになります。
毎分20Lの呼吸をする潜水作業者は、水深10mでは2気圧になり1/2に圧縮された空気を呼吸するため、毎分40Lの空気が必要になります。
1400L(使える空気)÷40L(1分間に必要な空気)=35分
答えは(1)


問13 送気式潜水器の空気槽に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)コンプレッサーから送られる圧縮空気は脈流であるが、調節用空気槽により緩和される。
(2)調節用空気槽は、送気に含まれる水分や油分を分離する機能をもつている。
(3)潜水作業終了後は、空気槽内の汚物を圧縮空気と一緒にドレーンコックから排出させる。
(4)予備空気槽は、調節用空気槽と一体に組み込まれている場合は少なく、通常、独立して設けられる。
(5)予備空気槽は、コンプレッサーの故障などの事故が発生した場合に備えて、必要な空気をあらかじめ蓄えておくための設備である。

予備空気送と調節用空気槽が一体になったものが一般的になります。
答えは(4)


問14 スクーバ式潜水における潜降の方法などに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)船の舷から水面までの高さが1.5mを超えるときは、船の甲板などから足を先にして水中に飛び込まない。
(2)潜降の際は、口にくわえたレギュレーターのマウスピースに空気を吹き込み、セカンドステージの低圧室とマウスピース内の水を押し出してから、呼吸を開始する。
(3)潜降時、耳に圧迫感を感じたときは、2~3秒その水深に止まって耳抜きをする。
(4)体調不良などで耳抜きがうまくできないときは、耳栓を使用して耳を保護し、潜水する。
(5)潜水中の遊泳は、通常は両腕を伸ばして体側につけて行うが、視界のきかないときは、腕を前方に伸ばして障害物の有無を確認しながら行う。

耳栓をすると外耳道(耳栓と鼓膜の間)に空間が出来る事になり、この空間の圧平衡が出来ません。
このため潜水時に耳栓を使用する事は出来ません。
答えは(4)


問15 スクーバ式潜水における浮上の方法に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)無停止減圧の範囲内の潜水の場合でも、水深3m前後で約5分、安全のため浮上停止を行うようにする。
(2)水深が浅い場合は、救命胴衣によって速度を調節しながら浮上するようにする。
(3)浮上開始の予定時間になったとき又は残圧計の針が警戒領域に入ったときは、浮上を開始する。
(4)浮上速度の目安として、自分が排気した気泡を見ながら、その気泡を追い越さないような速度で浮上する。
(5)バディブリージングは緊急避難の手段であり、多くの危険が伴うので、実際に行うには十分な訓練が必須であり、完全に技術を習得しておかなければならない。

浮上速度のコントロールが出来なくなる可能性があるため、浅い場合でも救命胴衣によって浮上を行ってはいけません。救命胴衣は水面に浮上後使用します。
答えは(2)


問16 生体の組織をいくつかの半飽和組織に分類して不活性ガスの分圧の計算を行うビュールマンのZH-L16モデルに基づく減圧方法に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)半飽和組織とは、高圧下にばく露された体内の組織に溶け込んだ不活性ガスの分圧が半飽和圧力になるまでに要する時間に応じて、体内の組織を16分割した各区分に相当するものである。
(2)M値とは、ある環境圧力に対して、労働者の身体が許容できるそれぞれの半飽和組織ごとの最大の不活性ガス分圧である。
(3)M値は、半飽和時間が長い組織ほど小さく、潜水者が潜っている深度が深くなるほど大きい。
(4)半飽和組織は、理論上の概念として考える組織(生体の構成要素)であり、特定の個々の組織を示すものではない。
(5)繰り返し潜水において、作業終了後、次の作業まで水上で休息する時間を十分に設けなかった場合には、次の作業における減圧時間がより短くなる。

繰り返し潜水で水上での休憩時間が短い場合には、体内に残留窒素がある状態で潜水する事になりますので、減圧時間は長くする必要があります。体内の残留窒素が多いほど減圧症になりやすく、減圧時間を長くする必要があります。
答えは(5)


問17 ヘルメット式潜水器などに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)ヘルメットの側面窓には、金属製格子などが取り付けられて窓ガラスを保護している。
(2)ドレーンコックは、潜水作業者が唾などをヘルメットの外に排出するときに使用する。
(3)潜水服内の空気が下半身に入り込まないようにするため、腰部をベルトで締め付ける。
(4)腰バルブには減圧弁が組み込まれていて、潜水作業者の呼吸量に応じて自動的に送気空気量を調節する。
(5)ヘルメットの送気ホース取付口には逆止弁が組み込まれていて、この弁で送気の逆流を防ぐ。

腰バルブでの流量調整は自動では行われず、潜水者が調節する必要があります。
答えは(4)


問18 スクーバ式潜水に用いられるボンベ、圧力調整器(レギュレーター)などに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)ボンベには、クロムモリブデン鋼などの鋼合金で製造されたスチールボンベと、アルミ合金で製造されたアルミボンベがある。
(2)残圧計の内部には高圧がかかつているので、表示部の針は顔を近づけないで斜めに見るようにする。
(3)ボンベは、一般に、内容積が4~18Lで、充填圧力は19.6MPa(ゲージ圧力)である。
(4)圧力調整器は、高圧空気を10MPa(ゲージ圧力)前後に減圧するファーストステージ(第1段減圧部)と、更に潜水深度の圧力まで減圧するセカンドステージ(第2段減圧部)から構成される。
(5)ボンベヘの圧力調整器の取付けは、ファーストステージのヨークをボンベのバルブにはめ込んで、ヨークスクリューで固定する。

ファーストステージ(第1段減圧部)では、「環境圧+0.1MPa」まで減圧します。
答えは(4)


問19 全面マスク式潜水器に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)全面マスク式潜水器では、ヘルメット式潜水器に比べて多くの送気量が必要となる。
(2)混合ガス潜水に使われる全面マスク式潜水器には、バンドマスクタイプやヘルメットタイプがある。
(3)全面マスク式潜水器のマスク内には、国と鼻を覆う口鼻マスクが取り付けられており、潜水作業者はこの口鼻マスクを介して給気を受ける。
(4)全面マスク式潜水器では、水中電話機のマイクロホンは口鼻マスク部に取り付けられ、イヤホンは耳の後ろ付近にストラップを利用して固定される。
(5)全面マスク式潜水器は送気式潜水器であるが、小型のボンベを携行して潜水することがある

全面マスク式潜水器は、呼吸をした時だけ空気が供給される応需要式潜水です。
ヘルメット式潜水器は、呼吸にかかわらず常に空気が供給される定量送気式潜水です。
空気消費量は「応需要式潜水<定量送気式潜水」です。
答えは(1)


問20 潜水業務に必要な器具に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)水深計は、2本の指針のうち1本は現在の水深を、他の1本は潜水中の最大深度を表示するものを使用することが望ましい。
(2)潜降索(さがり綱)は、丈夫で耐候性のある素材で作られたロープで、 1~2 cm程度の大さのものとし、水深を示す目印として3mごとにマークを付ける。
(3)全面マスク式潜水で使用するウエットスーツは、ブーツと一体となっており、潜水靴を必要としない。
(4)スクーバ式潜水でボンベを固定するハーネスは、バックパック、ナイロンベルト及びベルトバックルで構成される。
(5)水中ナイフは、漁網が絡みつき、身体が拘束されてしまつた場合などに脱出のために必要である。

ブーツと一体になった潜水服はドライスーツになります。ウエットスーツは通常ブーツと一体になっていません。
答えは(3)

高気圧障害

問1 肺及び肺換気機能に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)肺は、膨らんだり縮んだりして空気を出し入れしているが、肺自体には膨らむ力はない。
(2)肺の表面と胸郭内側の面は、胸膜で覆われており、両者間の空間を胸膜腔という。
(3)肺呼吸は、肺内に吸い込んだ空気中の酸素を取り入れ、血液中の二酸化炭素を排出するガス交換である。
(4)ガス交換は、肺胞及び呼吸細気管支で行われ、そこから口側の空間は、ガス交換には直接は関与していない。
(5)死腔が小さいほど、酸素不足や二酸化炭素蓄積が起こりやすい。

肺胞等のガス交換が行われる場所と口までの間の空間を死腔と呼びます。
この部分は一度吐いた空気を再度吸い込むことになるため、呼吸効率が悪くなり酸素不足や二酸化炭素の蓄積が起こります。死腔が大きいほど呼吸効率は悪化します。
答えは(5)


問2 人体に及ぼす水温の作用及び体温に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)体温は、代謝によって生じる産熱と、人体と外部環境の温度差に基づく放熱のバランスによって一定に保たれる。
(2)一般に水温が20℃以下の水中では、保温のためのウエットスーツやドライスーツの着用が必要となる。
(3)水の熱伝導率が空気の約10倍であるので、水中では体温が奪われやすい。
(4)一般に、体温が35℃以下の状態を低体温症という。
(5)水中で体温が低下すると、震え、意識の混濁や消失などを起こし、死に至ることもある。

水の熱伝導率は空気の25倍になります。
答えは(3)


問3 人体の神経系に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)神経系は、身体を環境に順応させたり動かしたりするために、身体の各部の動きや連携の統制をつかさどる。
(2)神経系は、中枢神経系と末梢神経系とに大別される。
(3)中枢神経系は、脳と脊髄から成っている。
(4)末梢神経系は、体性神経と自律神経から成っている。
(5)体性神経は、交感神経と副交感神経から成っている。

神経系は「中枢神経系」と「末梢神経系」から成ります。
「中枢神経系」は「脳」と「脊髄」から成ります
「末梢神経系」は「自律神経」と「体制神経」から成ります。
「体制神経」は皮膚からなどの刺激を伝える「知覚(感覚)神経」と中枢からの命令を筋肉などに伝える「運動神経」とがあります。
「自律神経」は「交感神経」と「副交感神経」からなります。
答えは(5)


問4 下の図は、人体の血液循環の経路の一部を模式的に表したものであるが、図中の血管A及びBとそれぞれを流れる血液の特徴に関し、(1)~(5)のうち正しいものはどれか。
血液循環の模式図

(1)血管Aは動脈、血管Bは静脈であり、血管Aを流れる血液は、血管Bを流れる血液よりも酸素を多く含んでいる。
(2)血管Aは動脈、血管Bは静脈であり、血管Bを流れる血液は、血管Aを流れる血液よりも酸素を多く含んでいる。
(3)血管Aは静脈、血管Bは動脈であり、血管Aを流れる血液は、血管Bを流れる血液よりも酸素を多く含んでいる。
(4)血管A、Bはともに動脈であり、血管Bを流れる血液は、血管Aを流れる血液よりも酸素を多く含んでいる。
(5)血管A、Bはともに静脈であり、血管Aを流れる血液は、血管Bを流れる血液よりも酸素を多く含んでいる。

心臓から送り出される血管を動脈と言いますので、A・Bともに動脈になります。
酸素は肺で血液中に取り込まれるため、肺から出てくる血管Bに多く肺に戻る血管Bは少なくなります。
答えは(4)


問5 潜水によって生じる圧外傷に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)圧外傷は、水圧が身体に不均等に作用することにより生じる。
(2)圧外傷は、潜降・浮上いずれのときでも生じ、潜降時のものをスクィーズ、浮上時のものをブロックと呼ぶことがある。
(3)潜降時の圧外傷は、中耳腔、副鼻腔、面マスクの内部、潜水服と皮膚の間などで生じる。
(4)深さ1.8m程度の浅い場所での潜水からの浮上でも圧外傷が生じることがある。
(5)浮上時の肺圧外傷を防ぐためには、息を止めたまま浮上する。

浮上時は水圧が減少するに伴い肺内の空気が膨張します。
息を止めたまま浮上すると、肺内で膨張した空気の逃げ場がなくなり、肺の過膨張傷害(圧外傷)を起こします。
浮上中には息を止めてはおけません。
答えは(5)


問6 潜水による副鼻腔や耳の障害に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)潜降の途中で耳が痛くなるのは、外耳道と中耳腔との間に圧力差が生じるためである。
(2)耳管は、中耳の鼓室から咽頭に通じる管で、通常は開いているが、唾を飲み込むような場合に閉じて鼓膜内外の圧調整を行う。
(3)耳の障害の症状には、耳の痛み、閉塞感、難聴、めまいなどがある。
(4)副鼻腔の障害は、鼻の炎症などによって、前頭洞、上顎洞などの副鼻腔と鼻腔を結ぶ管が塞がった状態で潜水したときに起こる。
(5)副鼻腔の障害の症状には、額の周り、目・鼻の根部の痛み、鼻出血などがある。

耳管は通常は閉じており、唾を飲み込むような場合に開いて圧平衡を行う
答えは(2)


問7 潜水業務における酸素中毒に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)酸素中毒は、中枢神経が冒される脳酸素中毒と肺が冒される肺酸素中毒に大きく分けられる。
(2)脳酸素中毒の症状には、吐き気、めまい、痙攣発作などがあり、特に痙攣発作が潜水中に起こると、多くの場合致命的になる。
(3)肺酸素中毒は、致命的になることは通常は考えられないが、肺機能の低下をもたらし、肺活量が減少することがある。
(4)脳酸素中毒は、50kPa程度の酸素分圧の呼吸ガスを長時間呼吸したときに生じ、肺酸素中毒は、140~160kPa程度の酸素分圧の呼吸ガスを短時間呼吸したときに生じる。
(5)炭酸ガス中毒に罹患すると、酸素中毒にも罹患しやすくなる。

脳酸素中毒は160MPa前後の高い酸素分圧を短時間呼吸する事で発症する。肺酸素中毒は100KPa程度の酸素分圧を比較的長時間(12時間前後)呼吸すると発症するとされる。
答えは(4)


問8 減圧症に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)減圧症は、通常、浮上後24時間以内に発症するが、飽和潜水では24時間以上経過した後でも発症することがある。
(2)減圧症は、関節の痛みなどを呈する比較的軽症な減圧症と、脳・脊髄や肺が冒される重症な減圧症とに大別されるが、この重症な減圧症を特にベンズという。
(3)チョークスは、血液中に発生した気泡が肺毛細血管を塞栓する重篤な肺減圧症である。
(4)規定の浮上速度や浮上停止時間を順守しても減圧症にかかることがある。
(5)減圧症は、潜水後に航空機に搭乗したり、高所への移動などによって低圧にばく露されたときに発症することがある。

ベンズと呼ばれる減圧症は四肢の関節部の痛みなどで、比較的軽症な減圧症になります。
答えは(2)


問9 医師が必要と認める期間、潜水業務への就業が禁止される疾病に該当しないものは、次のうちどれか。
(1)貧血症
(2)胃炎
(3)心臓弁膜症
(4)関節炎
(5)肺気腫

医師が必要と認める期間、業務が禁止される項目は次の7つです。
1、減圧症その他高気圧による障害又はその後遺症
2、肺結核その他呼吸器の結核又は急性上気道感染、じん肺、肺気腫(しゅ)その他呼吸器系の疾病
3、貧血症、心臓弁膜症、冠状動脈硬化症、高血圧症その他血液又は循環器系の疾病
4、精神神経症、アルコール中毒、神経痛その他精神神経系の疾病
5、メニエル氏病又は中耳炎その他耳管狭さくを伴う耳の疾病
6、関節炎、リウマチスその他運動器の疾病
7、ぜんそく、肥満症、バセドー氏病その他アレルギー性、内分泌系、物質代謝又は栄養の疾病
胃炎は業務が禁止される項目には含まれません。
答えは(2)


問10 一次救命処置に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)気道を確保するためには、仰向けにした傷病者のそばにしゃがみ、後頭部を軽く上げ、あごを下方に押さえる。
(2)呼吸を確認して普段どおりの息(正常な呼吸)がない場合や約10秒間観察しても判断できない場合は、心肺停止とみなし、心肺蘇生を開始する。
(3)胸骨圧迫と人工呼吸を行う場合は、胸骨圧迫10回に人工呼吸1回を繰り返す。
(4)胸骨圧迫は、胸が約5 cm沈む強さで胸骨の下半分を圧迫し、1分間に少なくとも60回のテンポで行う。
(5)AED(自動体外式除細動器)を用いて救命処置を行う場合には、人工呼吸や胸骨圧迫は、一切行う必要がない。

気道の確保は、後頭部を下げあごを上げます。
胸骨圧迫30回に対し、人工呼吸2回になります。
胸骨圧迫のペースは1分間に少なくとも100回から120回のテンポで圧迫します。
引きつづき電気ショックが必要な場合には、次のAED使用までの間は胸骨圧迫が必要である。
答えは(2)

関係法令

問11 全面マスク式潜水による潜水作業者に空気圧縮機を用いて送気し、最高深度40mまで潜水させる場合に、最小限必要な予備空気槽の内容積V(L)を求める次の式中のAの数値として、法令上、正しいもの、及びBの計算結果として、最も近いものの組合せは、(1)~(5)のうちどれか。
ただし、Dは最高の潜水深度(m)であり、Pは予備空気槽内の空気圧力(MPa、ゲージ圧力)で最高潜水深度における圧力(ゲージ圧力)の1.5倍とする。
送気量の公式

   A  B
(1)40  85
(2)40  96
(3)40  107
(4)60  128
(5)60  160

全面マスク式潜水は、応需要式潜水になりますので、Aは40になります。
Pは水深40メートルの1.5倍のゲージ圧力になりますので、0.4MPa×1.5=0.6MPaになります。
この数字を公式に当てはめると、40×(0.03D+0.4)/0.6=106.67
答えは(3)


問12 潜水業務に伴う業務に係る特別の教育に関し、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
(1)潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコックを操作する業務に就かせるときは、特別の教育を行わなければならない。
(2)再圧室を操作する業務に就かせるときは、特別の教育を行わなければならない。
(3)空気圧縮機及び空気槽の点検の業務に就かせるときは、特別の教育を行わなければならない。
(4)特別の教育を行ったときは、その記録を作成し、これを3年間保存しなければならない。
(5)特別の教育の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、その科目についての教育を省略することができる。

[・再圧室の操作に関する特別の教育内容は以下になります。]
学科「高気圧障害(病理、症状及び予防法)」「救急再圧法(基礎知識、標準再圧治療法)」「救急蘇生法(人工呼吸、人工蘇生法)」「関係法令(労働基準法、安衛法、施行法、安衛則、高圧則)」
実技「再圧室操作(バルブ又はコックの操作、人工呼吸、人工蘇生法)」
[・送気調節業務の特別の教育内容は以下になります。]
学科「潜水業務(潜水の基本と事故対応)」「送気業務(減圧方法、設備)」「高気圧障害(病理、予防法)」「関係法令(安衛法等)」
実技「送気の調節(ポンプのバルブ操作)」
送気調節業務の特別の教育には、「空気圧縮機の運転に関する実技」は含まれていません。
答えは(3)


問13 次の文中の    内に入れるA及びBの数値の組合せとして、法令上、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合には、潜水作業者ごとに、その水深の圧力下において毎分 A L以上の送気を行うことができる空気圧縮機を使用し、かつ、送気圧をその水深の圧力に B MPaを加えた値以上としなければならない。」
   A  B
(1)70  0.7
(2)60  0.8
(3)60  0.6
(4)40  0.8
(5)40  0.7

圧力調整器を利用する場合の送気量は、毎分40Lになります。
(圧力調整器を使用しない場合の送気量は、毎分60Lです。)
送気圧力には、水圧・送気ホース・配管類により送気損失に圧力調整器(レギュレーター)の作動圧力を加える必要があり、高圧則第28条で水圧+0.7MPaと規定されています。
答えは(5)


問14 空気圧縮機による送気式の潜水業務を行うとき、法令上、潜水前の点検が義務付けられていない潜水器具は次のうちどれか。
(1)さがり綱
(2)水中時計
(3)信号索
(4)送気管
(5)潜水器

送気式潜水の潜水前点検が必要な項目は、「潜水器、送気管(ホース類)、逆止弁、信号索、さがり綱(潜降索)」になります。
答えは(2)


問15 送気式潜水による潜水業務における連絡員に関し、法令上、定められていないものは次のうちどれか。
(1)事業者は、連絡員を潜水作業者2人以下ごとに1人配置する。
(2)連絡員は、潜水作業者と連絡して、その者の潜降及び浮上を適正に行わせる。
(3)連絡員は、潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ及びコックの異常の有無を点検する。
(4)連絡員は、送気設備の故障その他の事故により、潜水作業者に危険又は健康障害の生ずるおそれがあるときは、速やかに潜水作業者に連絡する。
(5)連絡員は、ヘルメット式潜水器を用いて行う潜水業務にあっては、潜降直前に潜水作業者のヘルメットがかぶと台に結合されているかどうかを確認する。

潜水作業者への送気の調節は、特別の教育を受けた送気員が行う必要がある。
答えは(3)


問16 潜水作業者の携行物に関する次の文中の    内に入れるA及びBの語句の組合せとして、法令上、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「空気圧縮機により送気して行う潜水業務を行うときは、潜水作業者に、信号索、水中時計、水深計及び A を携行させなければならない。
 ただし、潜水作業者と連絡員とが通話装置により通話することができるようにしたときは、潜水作業者に水中時計、 B を携行させないことができる。」
    A      B
(1)コンパス  水深計及びコンパス
(2)コンパス  信号索及びコンパス
(3)水中ライト 信号索及び水深計
(4)鋭利な刃物 信号索及び水深計
(5)鋭利な刃物 水深計及び鋭利な刃物

送気式潜水は「信号索、水中時計、水深計、鋭利な刃物」が必要です。(ただし通話装置を携行している場合は「信号索、水中時計、水深計」は必要ありません。)
答えは(4)


問17 潜水業務に常時従事する労働者に対して行う高気圧業務健康診断において、法令上、実施することが義務付けられていない項目は次のうちどれか。
(1)四肢の運動機能の検査
(2)鼓膜及び聴力の検査
(3)肺活量の測定
(4)血中尿素窒素に関する検査
(5)尿中の糖及び蛋自の有無の検査

義務付けられている健康診断の項目は次の6つです。
1、既往歴及び高気圧業務歴の調査
2、関節、腰若しくは下肢(し)の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査
3、四肢(し)の運動機能の検査
4、鼓膜及び聴力の検査
5、血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋(たん)白の有無の検査
6、肺活量の測定
血中尿素窒素に関する検査は、法令により義務付けられていません。
答えは(4)


問18 再圧室に関し、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
(1)再圧室の設置が義務付けられているのは、水深20m以上の場所で潜水業務を行う場合である。
(2)再圧室を使用するときは、再圧室の操作を行う者に加圧及び減圧の状態その他異常の有無について常時監視させる。
(3)再圧室を使用するときは、出入に必要な場合を除き、主室と副室との間の扉を閉じ、かつ、それぞれの内部の圧力を等しく保つ。
(4)再圧室を使用したときは、その都度、加圧及び減圧の状況を記録した書類を作成する。
(5)再圧室の設置場所には、必要のある者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を見やすい箇所に表示しておく。

再圧室の設置が義務付けられているのは、水深10m以上の場所で潜水業務を行う場合です。
答えは(1)


問19 問19 潜水士免許に関する次のAからDの記述について、法令上、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 水深10m未満での潜水業務については、免許は必要でない。
B 満18歳に満たない者は、免許を受けることができない。
C 故意又は重大な過失により、潜水業務について重大な事故を発生させたときは、免許の取消し又は免許の効力の一時停止の処分を受けることがある。
D 免許証を滅失又は損傷したときは、免許証再交付申請書を労働基準監督署長に提出して免許証の再交付を受けなければならない。
(1)A、B
(2)A、C
(3)A、D
(4)B、C
(5)B、D

潜水業務に就く場合には、水深に関係なく免許が必要です。
免許の再交付は労働基準監督署ではなく、都道府県労働局長から受けるます。
答えは(3)


問20 厚生労働大臣が定める規格を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない設備・器具の組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
(1)空気清浄装置、潜水器
(2)空気清浄装置、再圧室
(3)再圧室、空気圧縮機
(4)潜水器、再圧室
(5)潜水器、空気圧縮機

法令上、厚生労働大臣が定める規格を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならないものは「再圧室」と「潜水器」です。
答えは(4)