「潜水士業務」に関する基礎知識
潜水士試験に必要な「潜水業務」に関する基礎知識を説明しています。
「潜水業務」の基礎知識
潜水業務として水中に潜ると水中特有の現象が多く影響します。
空気が無いので呼吸が出来ない事はすぐに分かると思いますが、水圧が体に受ける影響や音の聞こえ方など分かりずらい現象まで多くあります。
この陸上と水中の現象を理解する事で、安全に水中に潜る事が出来るようになります。
このページで理解してほしい事は以下の内容になります。
・水圧の仕組みと影響
・水圧による気体が受ける影響
・水圧による気体の溶解による影響
・水中での光の進み方や影響
・水中での音の進み方や影響
・潜水方式や潜水器について
・潮流による危険性
・浮力による影響
・水中拘束や溺れ
・特殊な環境での注意点
潜水業務で出される10個の問題は、物理に関する事がほとんどです。
苦手意識がある方も居ると思いますが、今後の問題の基礎になる部分ですのでしっかり身に付けましょう。
圧力について
圧力と言う言葉は聞いた事があると思いますが、実際にどのような物で、どれ位の力が加わっているのでしょうか?
圧力とは「ある一定の面積に掛かる力」の事を言います。この圧力はいろいろな単位で表示されるので、分かりづらい人も多いのではないでしょうか?
圧力の単位は通常P(パスカル)で表示します。1P(パスカル)は1N/㎡と同じ強さの圧力です。
陸上は大気によって圧力がかかった状態になっています。皆さんが今生活しているココも、もうすでに圧力が掛かった状態なのです。これを大気圧と呼んでいます。
ちなみに大気圧は、1気圧(atm)とも表示され、1気圧=1013hpa(ヘクトパスカル)=0.1013Mpa(メガパスカル)になります。
天気予報で表示されるhpa(ヘクトパスカル)はこの事になります。
空のペットボトルを強く吸うと、つぶれる事は皆さんも分かると思います。
この現象は、ペットボトルの中の気圧を低くしたため、ペットボトルの外の大気圧によって押しつぶされた事になります。
圧力は気体や液体に掛かった時、すべての面に「等しく垂直方向」に掛かる事も覚えましょう。
たとえば風船を膨らますとき、空気の入り口から空気をまっすぐ入れても(気圧を掛ける事になります)、風船は丸く膨らむと思います。
これは風船の中の気圧が、風船の面全体に等しく掛かっているからです。
潜水士試験では、このような問題が出題されます。
ここで大事なのは、「圧力とは単位面積当たりに掛かる力」と「気体や液体に掛かった力は全ての面に等しい」の2つです。
AのピストンもBのピストンも同じ直径の場合は、Aのピストンを1N(ニュートン)の力で押すとBのピストンにも1N(ニュートン)の力が作用します。
ただしこの場合は、ピストンの直径が異なります。
注意したいのは、「直径」ではなく「面積」に力が加わると言う事です。
円の直径は、半径×半径×3.14なので、
Aのピストンは、「1×1×3.14=3.13c㎡」
Bのピストンは、「3×3×3.14=28.26c㎡」
つまり、28.26÷3.13=9.03になり、Bのピストンの面積は、Aのピストンの面積の約9倍の大きさになります。
同じ面積に同じ力が掛かる為、9倍の面積になれば9倍の力が掛かる事になります。
答えは、1Nの9倍で、9N(ニュートン)の力が作用します。
水圧について
水圧とは水中で掛かる圧力の事です。
大気圧は空気の重さで掛かる圧力ですが、水圧は水の重さで掛かる圧力です。
大気圧も山の上に行けば低くなり、山から下りれば高くなります。
水圧も水深が浅いと低く、水深が深いと高くなります。
ただし、空気より水の方がはるかに重いため、ほんの少し水深が深くなっただけでも、水圧は大きく変化します。
海面における大気圧が1気圧(atm)になりますが、水深10mまで行っただけで水圧は1気圧(atm)掛かります。
この水圧に大気圧が元々掛かっている為、合計して2気圧(atm)になります。
つまり、水深10mまで潜ると気圧は2倍になります。
30mまで潜ると水圧分が3気圧と大気圧が1気圧の合計4気圧が掛かっていることになります。
水圧が掛かると(気圧が大きくなると)、気体の体積が小さくなります。
体積は小さくなりますが、圧縮されているだけなので、質量(重さ)は変わりません。
逆に水圧が無くなると、気体の体積は元に戻ります。
気体の法則
上記の「水圧について」でも簡単に説明しましたが、気体には他にも色々な性質があります。
以下の気体性質は必ず覚えましょう。
・気体は圧力が一定のとき、体積が絶対温度に比例する。
(シャルルの法則)と呼ばれます。
絶対温度とはこれ以上低い温度がない温度を0度にした単位です。
具体的には、摂氏-273度が物理的に最低の温度になり、この温度を0度とした温度表示です。
摂氏20度の温度は、絶対温度では273度を足して293度になります。
・気体は温度が一定のとき、圧力×体積が一定になる。
(ボイルの法則)と呼ばれています。
逆に圧力が高くなれば体積が減少する為、体積は圧力に反比例します。
・温度が一定のとき、液体に溶解する気体の量は圧力に比例する。
(ヘンリーの法則)と呼ばれています。
気圧が高くなると液体にたくさんの気体が溶け込みます。
溶け込む量は1気圧から2気圧になると、2倍溶け込むことになります。
・液体に溶け込む気体の量は、気体の分圧にも比例する。
(ヘンリーの法則)と呼ばれています。
気体には複数の元素からなる物が多いですが、その割合をそのまま割ったものを分圧と言います。
窒素が79%で酸素が21%の場合は、1気圧での分圧は窒素が0.79気圧、酸素が0.21気圧になります。
気体の性質は以下になります。
酸素:無色、無臭、無味で呼吸に必要な気体です。
一見体に良さそうに思いますが、高圧化で高濃度の酸素を呼吸すると酸素中毒を起こします。
窒素:無色、無臭、無味で不活性な気体です。
通常の気圧化では無害ですが、水圧が掛かると(分圧が高くなると)麻酔作用があります。この麻酔作用を窒素酔いと言います。
ヘリウム:無色、無臭、無味で不活性で軽い気体です。
科学的に安定しており、窒素のような麻酔作用もないと言われています。その為深い潜水には、窒素の代わりに使用されます。
二酸化炭素:無色、無臭、無味で呼吸によって生じます。
一酸化炭素:体内で酸素を運ぶヘモグロビンと強く結びつくため、非常に有害な気体です。
火災などでよく聞く一酸化炭素中毒を起こします。
一酸化炭素自体は無色、無臭、無味なため発見が困難です。