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2017年(平成29年)1月~6月の潜水士試験の過去問の解説

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潜水業務

問1 圧力と浮力に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)水中にある物体の質量が、これと同体積の水の質量と同じ場合は、中性浮力の状態となる。
(2)質量が一定であっても、圧縮性のある物体を水中に入れると、水深によって浮力は変化する。
(3)海水は淡水よりも密度がわずかに大きいので、作用する浮力もわずかに大きい。
(4)水で満たされた直径の異なる二つのシリンダが連絡している下の図の装置で、ビストンAに1Nのカを加えると、ビストンBには3Nの力が作用する。
ピストンの圧力

(5)人体の表面には、大気圧下で約0.1MPa(絶対圧力)の圧力がかかっており、潜水した場合は、潜水深度に応じてこれに水圧が加わることになる。

伝わる圧力は直径ではなく面積に比例します。
そのため、ピストンAに1Nの力が加わると、ピストンBには9Nの力が作用します。
答えは(4)


問2 大気圧下で1Lの空気は、水深20mでは何Lになるか。
(1)1/2L
(2)1/3L
(3)1/4L
(4)1/5L
(5)1/6L

気体の体積は周囲圧に対して反比例して減っていきます。
大気下では1気圧の大気圧が掛かっており、水深10mでは大気圧1 気圧+水圧1気圧の合計2気圧が掛かります。水深20mでは大気圧1気圧+水圧2気圧の合計3気圧が掛かることになります。
そのため、水深20mでは3倍の周囲圧が掛かることにより、気体の体積は3分の1になります。
答えは(2)


問3 気体の性質に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)ヘリウムは、密度が極めて大きく、他の元素と化合しにくい気体で、呼吸抵抗は少ない。
(2)窒素は、化学的に安定した不活性の気体で、高圧下でも麻酔性などの問題は生じない。
(3)二酸化炭素は、空気中に0.03~ 0.04%程度の割合で含まれている無色・無臭の気体で、人の呼吸の維持には、血液中に微量含まれていることが必要である。
(4)酸素は、無色・無臭の気体で、生命維持に必要不可欠なものであり、空気中の酸素濃度が高いほど人体にはよい。
(5)一酸化炭素は、物質の不完全燃焼などによって生じ、無色の有毒な気体で、物が焦げたような異臭がある。

ヘリウムの密度は小さくなります。
高圧化で発生する窒素酔いの主な原因は窒素です。その為麻酔性があると考えられます。
酸素濃度が高いと酸素中毒になる可能性があります。
一酸化炭素は無臭の気体です。
答えは(3)


問4 気体の液体への溶解に関する次の文中の    内に入れるA及びBの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、その気体のその液体に対する溶解度は小さく、また、その気体はその液体と反応する気体ではないものとする。
「・温度が一定のとき、一定量の液体に溶解する気体の質量は、その気体の圧カに A 
 ・温度が一定のとき、一定量の液体に溶解する気体の体積は、その気体の圧力に B 。」
    A           B
(1)かかわらず一定である 比例する
(2)反比例する      比例する
(3)反比例する      かかわらず一定である
(4)比例する       反比例する
(5)比例する       かかわらず一定である

液体に溶解する気体の質量は圧力に比例しますが、圧力によって体積が小さくなった気体が溶解するため体積は変わりません。
答えは(5)


問5 水中における光や音に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)水は空気に比べ密度が大きいので、水中では音は空気中より遠くまで伝播する。
(2)水中では、音の伝播速度が非常に速いので、耳による音源の方向探知が容易になる。
(3)水分子による光の吸収の度合いは、光の波長によって異なり、波長の長い赤色は、波長の短い青色より吸収されやすい。
(4)濁った水中では、オレンジ色や黄色で蛍光性のものが視認しやすい。
(5)澄んだ水中でマスクを通して近距離にある物を見る場合、実際の位置より近く、また大きく見える。

水中では音の伝播速度が速くなるため、左右の耳に入る音の時間差が少なく、音源の方向は分かりづらくなります。
答えは(2)


問6 潜水の種類及び方式に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)硬式潜水は、潜水作業者が潜水深度に応じた水圧を直接受けて潜水する方法であり、送気方法により送気式と自給気式に分類される。
(2)ヘルメット式潜水は、金属製のヘルメットとゴム製の潜水服により構成された潜水器を使用し、操作は比較的簡単で、複雑な浮力調整が必要ない。
(3)ヘルメット式潜水は、応需送気式の潜水で、一般に船上のコンプレッサーによって送気し、比較的長時間の水中作業が可能である。
(4)自給気潜水で一般的に使用されている潜水器は、開放回路型スクーバ式潜水器である。
(5)全面マスク式潜水は、ヘルメット式潜水器を小型化した潜水器を使用し、空気消費量が少ない定量送気式の潜水である。

硬式潜水は水圧を受けない潜水方式です。
ヘルメット式潜水は潜水服内などに気体が存在するため、こまめな浮力調整が必要になります。
ヘルメット式潜水は空気が常にヘルメット内に出続ける定量送気式です。
全面マスク式潜水は吸った時だけ空気が流れる応需送気式潜水です。
答えは(4)


問7 潜水業務における潮流による危険性に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)潮流の速い水域での潜水作業は、減圧症が発生する危険性が高い。
(2)潮流は、千潮と満潮がそれぞれ1日に通常1回ずつ起こることによって生じる。
(3)潮流のある場所における水中作業で潜水作業者が潮流によって受ける抵抗は、ヘルメット式潜水が一番小さく、全面マスク式潜水、スクーバ式潜水の順に大きくなる。
(4)潮流は、湾口、水道、海峡などの狭く、複雑な海岸線をもつ海域では弱いが、開放的な海域では強い。
(5)送気式潜水では、潮流による抵抗がなるべく小さくなるよう、下の図のAに示すように送気ホースをたるませず、まっすぐに張るようにする。
送気ホース長さ

干潮と満潮は通常1日2回ずつ起こる。
潮流の影響は器材などで体積が大きい潜水方式のほうが影響を受けやすい
潮流は複雑な地形のほうが強くなる傾向にある。
送気ホースの張りはBが正解です。
答えは(1)


問8 潜水墜落又は吹き上げに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)潜水墜落は、潜水服内部の圧力と水圧の平衡が崩れ、内部の圧力が水圧より低くなったときに起こる。
(2)潜水墜落では、ひとたび浮力が減少して沈降が始まると、水圧が増して浮力が更に減少するという悪循環を繰り返す。
(3)ヘルメット式潜水では、潜水作業者が頭部を胴体より下にする姿勢をとり、逆立ちの状態になってしまったときに潜水墜落を起こすことがある。
(4)吹き上げは、ヘルメット式潜水のほか、 ドライスーツを使用する潜水においても起こる危険性がある。
(5)吹き上げ時の対応を誤ると、逆に潜水墜落を起こすことがある。

ヘルメット式潜水で逆立ちの状態になると、排気が行えないため吹上を起こす危険性がある。
答えは(3)


問9 水中拘束又は溺れの予防に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)送気式潜水では、潜水作業船にクラッチ固定装置やスクリュー覆いを取り付ける。
(2)送気式潜水では、障害物を通過するときは、周囲を回ったり、下をくぐり抜けたりせずに、その上を越えていくようにする。
(3)沈船や洞窟などの狭いところに入る場合には、ガイドロープを使わないようにする。
(4)スク‐バ式潜水では、救命胴衣又はBCを着用する。
(5)救助に向かうことのできる潜水者(スタンバイダイバー)を待機させておく。

狭い場所や暗い場所に入るときには、ガイドロープを使用すべきである。
答えは(3)


問10 特殊な環境下における潜水に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)汚染のひどい水域では、スクーバ式潜水は不適当である。
(2)冷水中では、ウエットスーツよリドライスーツの方が体熱の損失が少ない。
(3)流れの速い河川での潜水では、命綱を使用したり、装着するウエイト重量を増やす必要がある。
(4)暗渠内潜水は、非常に危険であるので、潜水作業者は豊富な潜水経験、高度な潜水技術及び精神的な強さが必要とされる。
(5)山岳部のダムなど高所域での潜水では、環境圧は低いが、減圧症の予防のため、通常の潜水と同じ減圧時間で減圧する必要がある。

高所域での潜水は環境圧が低いため、通常より長い減圧時間が必要になる。
答えは(5)

送気、潜降及び浮上

問11 ヘルメット式潜水の送気系統を示した下の図において、AからCの設備の名称の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
送気系統図17a

     A      B      C
(1)予備空気槽   予備空気槽  調節用空気槽
(2)調節用空気槽  空気清浄装置 予備空気槽
(3)調節用空気槽  予備空気槽  予備空気槽
(4)コンプレッサー 予備空気槽  調節用空気槽
(5)コンプレッサー 調節用空気槽 予備空気槽

図を覚える必要があります。
ストレーナーは空気取り込み口であるため、その次に来るものはコンプレッサーです。
送気ホースはダイバーに繋がっているホースです。送気ホースは調節用空気層に繋がっています。
答えは(5)


問12 毎分20Lの呼吸を行う潜水作業者が、水深10mにおいて、内容積12L、空気圧力19MPa(ゲージ圧力)の空気ボンベを使用してスクーバ式潜水により潜水業務を行う場合の潜水可能時間に最も近いものは次のうちどれか。
ただし、空気ボンベの残圧が3 MPa(ゲージ圧力)になったら浮上するものとする。
(1)28分
(2)38分
(3)48分
(4)58分
(5)68分

19MPaも空気圧では、おおよそ190倍の空気が圧縮されて入っています。その為、12Lのタンク×190倍=2280Lの空気が入っている事になります。
3MPa残すため、12Lのタンク×30倍=360Lの空気は使わない計算になります。
2280Lある空気のうち360Lは残すため使いませんので、1920Lの空気が使用できる計算になります。
陸上で毎分20Lの空気を消費する作業者の場合は、水深10mでは2気圧が掛かっているため、毎分40Lの空気を消費する事になります。
使える空気の量1920L÷1分間に40Lの空気を使用=48分間の潜水が可能になります。
答えは(3)


問13 送気式潜水に使用する設備・器具に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)コンプレッサーの空気取入口は、作業に伴う破損などを避けるため機関室の内部に設置する。
(2)コンプレッサーの腫縮効率は、圧力の上昇に伴い低下する。
(3)流量計は、コンプレッサーと調節用空気槽の間に取り付けて、潜水作業者に送られる空気量を測る計器である。
(4)フェルトを使用した空気清浄装置は、潜水作業者に送る圧縮空気に含まれる水分と油分のほか、二酸化炭素と一酸化炭素を除去する。
(5)終業後、調節用空気槽は、内部に0.1MPa(ゲージ圧力)程度の空気を残すようにしておく。

空気取り入れ口は汚染空気の混入を防ぐため、機関室の外に設置します。
流量計は調節用空気槽と潜水作業者の間に設置しなければ、作業者への送気量を計ることができません。
空気清浄装置で取り除かれるものは、水分と油分が主です。
調節用空気層は作業後ドレーンコックから全ての空気を抜きます。(スクーバ潜水のタンクは残します。)
答えは(2)


問14 スクーバ式潜水における潜降の方法などに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)船の舷から水面までの高さが1.5mを超えるときは、船の甲板などから足を先にして水中に飛び込まない。
(2)潜降の際は、口にくわえたレギュレーターのマウスピースに空気を吹き込み、セカンドステージの低圧室とマウスピース内の水を押し出してから、呼吸を開始する。
(3)マスクの中に水が入ってきたときは、深く息を吸い込んでマスクの上端を顔に押し付け、鼻から強く息を吹き饉してマスクの下端から水を排出する。
(4)体調不良などで耳抜きがうまくできないときは、耳栓を使用して耳を保護し、潜水する。
(5)潜水中の遊泳は、通常は両腕を伸ばして体側につけて行うが、視界のきかないときは腕を前方に伸ばして障害物の有無を確認しながら行う。

潜水作業で耳栓を使用すると、耳栓と鼓膜の間に空間ができるため、耳栓を使用しての潜水は出来ません。
答えは(4)


問15 スクーバ式潜水における浮上の方法に関し、誤っているものは次のうちどれか、
(1)無停止減圧の範囲内の潜水の場合でも、水深3 m前後で約5分、安全のため浮上停止を行うようにする。
(2)水深が浅い場合は、救命胴衣によって速度を調節しながら浮上するようにする。
(3)浮上開始の予定時間になったとき又は残圧計の針が警戒領域に入ったときは、浮上を開始する。
(4)浮上速度の自安として、自分が排気した気泡を見ながら、その気泡を追い越さないような速度で浮上する。
(5)バディブリージングは緊急避難の手段であり、多くの危険が伴うので、実際に行うには十分な訓練が必須であり、完全に技術を習得しておかなければならない。

救命胴衣による浮上は浮上速度のコントロールが難しいため行ってはいけません。救命胴衣は水面に浮上してから使用するものです。
答えは(2)


問16 生体の組織をいくつかの半飽和組織に分類して不活性ガスの分圧の計算を行うビュ―ルマンのZH-L16モデルにおける半飽和時間及び半飽和組織に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)環境における不活性ガスの圧力が加圧された場合に、加圧前の圧力から加圧後の飽和圧力の中間の圧力まで不活性ガスが生体内に取り込まれる時間を半飽和時間という。
(2)生体の組織を、半飽和時間の違いにより、16の半飽和組織に分類し、不活性ガスの分圧を計算する。
(3)半飽和組織は、理論上の概念として考える組織(生体の構成要素)でおり、特定の個々の組織を示すものではない。
(4)不活性ガスの半飽和時間が短い組織は、血流が豊富であり、半飽和時間が長い組織は、血流が乏しいt
(5)すべての半飽和組織の半飽和時間は、ヘリウムより窒素の方が短い。

半飽和時間は窒素よりヘリウムの方が短くなります。
答えは(5)


問17 潜水作業における酸素分圧、肺酸素毒性量単位、(UPTD)及び累積肺酸素毒性量単位(CPTD)に関し、誤っているものは(1)~(5)のうちどれか。
なお、UPTDは、所定の加減圧区間ごとに次の式により算出される酸素毒性の量である。
送気系統図17a

(1)一般に50kPaを超える酸素分圧にぼく露されると、肺酸素中毒に冒される。
(2)1UPTDは、100kPa(約1気工)の酸素分圧に1分間ぼく露されたときの毒性単位である。
(3)1目当たりの酸素の許容最大披ぼく量は、800UPTDである。
(4)1週間当たりの酸素の許容最大被ばく量は、2,500CPTDである。
(5)連日作業する場合は、1日当たりの酸素ぼく露量が平均化されるようにする。

1日あたりの許容最大被爆量を600UPTDです。
答えは(3)


問18 間18 下の図はヘルメット式潜水器のヘルメットをスケッチしたものであるが、図中に 灰色部分 又は 円印 で示すA~Eの部分に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
ヘルメット式潜水器

(1)Aの 灰色部分 部分はシコロで、潜水服の襟ゴム部分に取り付け、押え金と蝶ねじで固定する。
(2)Bの 円印 部分は排気弁で、潜水作業者が自分の頭部を使ってこれを操作して余剰空気や呼気を排出する。
(3)Cの 円印 部分は送気ホース取り付部で、送気された空気が逆流することがないよう、逆上弁が設けられている。
(4)Dの 円印 部分はドレーンコックで、吹き上げのおそれがある場合など緊急の排気を行うときに使用する。
(5)Eの 円印 部分は側面窓で、金属製格子などが取り付けられて窓ガラスを保護している。

ドレーンコックの使用目的は、つばなどを排出するためのもので、吹き上げ時の排気には使用しません。
答えは(4)


問19 スクーバ式潜水に用いられるボンベ、圧力調整器(レギュレーター)などに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)ボンベには、クロムモリブデン鋼などの鋼合金で製造されたスチールボンベと、アルミ合金で製造されたアルミボンベがある。
(2)ボンベを取り扱うときは、炎天下に放置しないようにするとともに、使用後は水洗いする。
(3)ボンベは、一般に、内容積が4~18Lで、充填圧力は19.6MPa(ゲージ圧力)である。
(4)圧力調整器は、始業前に、ボンベから送気した空気の漏れがないか、呼吸がスムーズに行えるか、などについて点検する。
(5)圧力調整器は、高圧空気を10MPa前後に減圧するファーストステージ(第1段減圧部)と、更に潜水深度の圧力まで減圧するセカンドステージ(第2段減圧部)から構成される。

第1段減圧部は「1MPa+環境圧」まで減圧します。
答えは(5)


問20 潜水業務に必要な器具に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)救命胴衣は、引金を引くと圧力調整器のファーストステージ(第1段減圧部)から高圧空気が出て、膨張するようになっている。
(2)信号索は、水中電話があっても故障などに備えて用意しておくことが望ましい。
(3)スクーバ式潜水で使用する足ヒレには、ブーツを履いたままはめ込むフルフィットタイプと、ブーツの爪先だけを差し込み、踵をストラップで固定するオープンヒルタイプとがある。
(4)ヘルメット式潜水の場合、潜水靴は、姿勢を安定させるため、重量のあるものを使用する。
(5)スクーバ式潜水で使用するマスクは、顔との密着性が重要で、ストラップをかけないで顔に押しつけてみて呼吸を行い、漏れのないものを使用する。

救命胴衣は高圧空気ではなく、第1段減圧部で減圧された中圧を利用します。
答えは(1)

高気圧障害

問1 肺及び肺換気機能に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)肺呼吸は、肺内に吸い込んだ空気中の酸素を取り入れ、血液中の二酸化炭素を排出するガス交換である。
(2)ガス交換は、肺胞及び呼吸細気管支で行われ、そこから口側の空間は、ガス交換には直接は関与していない。
(3)空気の通路のうちガス交換に関与しない空間を死腔といい、潜水呼吸器を装着すれば死腔の容積は増加する。
(4)潜水中は、呼吸ガスの密度が高くなり呼吸抵抗が増すので、呼吸運動によって気道内を移動できる呼吸ガスの量は深度が増すに従って減少する。
(5)胸膜腔に気体が侵入し胸郭が広がっても肺が広がらない状態を、空気閉塞という。

胸膜腔は通常は空気はありません。肺胞が破れ胸膜腔に通じると、胸膜腔に空気が流れ込み肺は収縮した状態になりなす。この症状は気胸と言います。
答えは(5)


問2 人体の循環器系に関し、誤っているものは次のうちどれかぃ
(1)心臓は左右の心室及び心房、すなわち四つの部屋に分かれており、血液は左心室から体全体に送り出される。
(2)末梢組織から二酸化炭素を受け取った血液は、毛細血管から静脈、大静脈を通って心機の右心房に戻る。
(3)酸素を多く含む血液を送る血管が動脈で、二酸化炭素を多く含む血液を送る血管が静脈である。
(4)心臓の左右の心房の間が卵円開存で通じていると、減圧障害を引き起こすおそれがある。
(5)大動脈の根元から出た冠動脈は、心臓の表面を取り巻き、心筋に酸素と栄養を供給する。

心臓から出る血管が動脈、心臓に戻る血管を静脈と言います。心臓から肺に向かう血管は動脈になりますが、酸素は少なく二酸化炭素を多く含んでいます。
答えは(3)


問3 人体の神経系に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)神経系は、身体を環境に順応させたり動かしたりするために、身体の各部の動きや連携の統制をつかさどる。
(2)神経系は、中枢神経系と末梢神経系から成る。
(2)中枢神経系は、脳と脊髄から成るが、脳は特に多くのエネルギーを消費するため、脳への酸素供給が数分問途絶えると修復困難な損傷を受ける。
(4)末精神経系は、体性神経と自律神経から成る。
(5)体性神経は、交感神経と副交感神経から成り、運動と感覚の作用を調節している。

体性神経は運動神経と感覚神経からなります。
答えは(5)


問4 人体に及ぼす水温の作用などに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)人体は水に浸かると手足、頭部などからの熱機夫が大きいので、その部位からの体熱損失を少なくする必要がある。
(2)人体の代謝という化学的プロセスによって熱が生じ、人体と外部環境の温度差という物理的プロセスによって熱が放散する。
(3)水の熱伝導率は空気の約3倍であるので、水中では、体温が奪われやすい。
(4)水は空気に比べて熱伝導率が高いので、ウエットスーツではドライスーツに比べて体が冷えやすい。
(5)水中で体温が低下すると、震え、意識の混濁や消失などを起こし、死に至ることもある。

水の熱伝導率は空気のおよそ26倍である。
答えは(3)


問5 潜水によって生じる圧外傷に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)圧外傷は、水圧が身体に不均等に作用することにより生じる。
(2)圧外傷は、潜降、浮上のいずれのときでも生じ、潜降時のものをスクィーズ、浮上時のものをブロックと呼ぶことがある。
(3)潜降時の圧外傷は、中耳腔、副鼻腔、面マスクの内部、潜水服と皮膚の間などで生じる。
(4)浮上時の圧外傷は、浮上による圧力変化のために体腔の容積が減少することによって生じ、副鼻腔、肺などで生じる。
(5)虫歯の処置後に再び虫歯になって内部に密閉された空洞ができた場合、その部分で圧外傷が生じることがある。

浮上時は水圧が下がり気体の体積が膨張するため、体腔の体積が大きくなることによって生じます。
答えは(4)


問6 潜水しよる副鼻腔や耳の障害に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)潜降の途中で耳が痛くなるのは、外耳道と中耳腔との間に圧力差が生じるためである。
(2)耳管は、中耳の鼓室から咽頭に通じる管で、通常は開いているが、唾を飲み込むような場合に閉じて鼓膜内外の圧力調整を行う。
(3)耳の障害の症状には、耳の痛み、開塞感、難聴、めまいなどがある。
(4)訓鼻腔の障害は、鼻の炎症などによって、前頭洞、上顎洞などの副鼻腔と鼻腔を結ぶ管が塞がった状態で潜水したときに起こる。
(5)副鼻腔の障害の症状には、額の周り、目・鼻の根部の痛み、鼻出血などがある

中耳から咽頭に通じる管(耳管)は通常閉じており、つばを飲み込むときなど(耳抜き)に開いて圧平衡を行う。
答えは(2)


問7 潜水業務における二酸化炭素中毒及び一酸化炭素中毒に関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)ヘルメット式潜水で二酸化炭素中毒を予防するには、十分な送気を行う。
(2)二酸化炭素中毒は、二酸化炭素が血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンと強く結合し、酸素の運搬ができなくなるために起こる。
(3)二酸化炭素中毒の症状には、頭痛、めまい、体のほてり、意識障害などがある。
(4)エンジンの排気ガスが、空気圧縮機の送気やボンベ内の充填空気に混入した場合は、一酸化炭素中毒を起こすことがある。
(5)一酸化炭素中毒の症状には、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐などのほか、重い場合には意識障害、昏睡状態などがある。

赤血球に含まれるヘモグロビンと強く結合し、酸素の運搬が出来なくなるのは一酸化炭素中毒である。
答えは(2)


問8 窒素酔いに関し、誤っているものは次のうちどれか。
(1)一般に、窒素分圧が0.4MPa前後になると、潜水作業者には窒素酔いの症状が現れる。
(2)飲酒、疲労、大きな作業量、不安などは、窒素酔いを起こしやすくする。
(3)窒素酔いにかかると、通常、気分が憂うつとなり、悲観的な考え方になる。
(4)窒素酔いが誘因となって正しい判断ができず、重大な結果を招くことがある。
(5)深い潜水における窒素酔いの予防のためには、呼吸ガスとして、空気の代わりにヘリウムと酸素の混合ガスなどを使用する。

窒素酔いは通常、自信過剰や楽観的に考えになる。
答えは(3)


問9 医師が必要と認める期間、潜水業務への就業が禁止される疾病に該当しないものは、次のうちどれか。
(1)神経痛
(2)高血圧症
(3)貧血症
(4)色覚異常
(5)中耳炎

医師が必要と認める期間、業務が禁止される項目は次の7つです。
1、減圧症その他高気圧による障害又はその後遺症
2、肺結核その他呼吸器の結核又は急性上気道感染、じん肺、肺気腫その他呼吸器系の疾病
3、貧血症、心臓弁膜症、冠状動脈硬化症、高血圧症その他血液又は循環器系の疾病
4、精神神経症、アルコール中毒、神経痛その他精神神経系の疾病
5、メニエル氏病又は中耳炎その他耳管狭さくを伴う耳の疾病
6、関節炎、リウマチスその他運動器の疾病
7、ぜんそく、肥満症、バセドー氏病その他アレルギー性、内分泌系、物質代謝又は栄養の疾病
視力、色覚の項目はありません。
答えは(4)


問10 一次救命処置に関し、正しいものは次のうちどれか。
(1)気道を確保するためには、仰向けにした傷病者のそばにしゃがみ、後頭部を軽く上げ、あごを下方に押さえる。
(2)胸骨圧迫を行うときは、傷病者を柔らかいふとんの上に寝かせて行う。
(3)人工呼吸と胸骨圧迫を行う場合は、人工呼吸2回に胸骨圧迫30回を繰り返す。
(4)胸骨圧迫は、胸が約5 cm沈む強さで胸骨の下半分を圧迫し、1分間に少なくとも60回のテンポで行う。
(5)AED(自動体外式除細動器)を用いて救命処置を行う場合には、人工呼吸や胸骨圧迫は、一切行う必要がない。

気道確保は、あごを上げ、後頭部を下げます。
柔らかいものの上では効果的な胸骨圧迫が行えない場合があります。
胸骨圧迫は少なくても1分間に100回のペースで行う。
AEDを使用して電気ショックの必要がなくなれば、心臓が動いているため胸骨圧迫は必要ない。
引きつづき電気ショックが必要な場合には、次のAED使用までの間は胸骨圧迫が必要である。
答えは(3)

関係法令

問11 空気圧縮機によって送気を行い、潜水作業者に圧力調整器を使用させないで潜水業務を行わせる場合、潜水作業者ごとに備える予備空気槽の内容積V(L)を計算する式は、法令上、次のうちどれか。
ただし、Dは最高の潜水深度(m)、Pは予備空気槽内の空気のゲージ圧力(MPa)を示す。
送気量公式

左上の数字60は圧力調整器を使用しない場合、40は圧力調整器を使用する場合です。
答えは(1)


問12 次の業務に労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならないものはどれか。
(1)潜水用空気圧縮機を運転する業務
(2)潜水器を点検する業務
(3)再圧室を操作する業務
(4)連絡員の業務
(5)水深10m未満の場所における潜水業務

特別の教育が必要な業務は以下の2つです。
・潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコックを操作する業務
・再圧室を操作する業務
答えは(3)


問13 次の文中の    内に入れるA及びBの数字の組合せとして、法令上、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合には、潜水作業者ごとに、その水深の圧力下において毎分 A L以上の送気を行うことができる空気圧縮機を使用し、かつ、送気圧をその水深の圧力に B MPaを加えた値以上としなければならない。」
   A B
(1)70 0.7
(2)60 0.8
(3)60 0.6
(4)40 0.8
(5)40 0.7

圧力調整器を使用する場合は毎分40L、使用しない場合は60L以上の送気が必要
圧力は水圧+0.7MPa必要です。
答えは(5)


問14 全面マスク式潜水で空気圧縮機により送気する潜水業務を行うとき、法令上、潜水前の点検が義務付けられていない潜水器具は次のうちどれか。
(1)潜水器
(2)送気管
(3)信号索
(4)圧力調整器
(5)救命胴衣

送気式潜水の潜水前点検の項目は以下の5つです。
潜水器、送気管、信号索、逆止弁、さがり綱
答えは(5)


問15 送気式潜水による潜水業務における連絡員に関し、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
(1)事業者は、連絡員を潜水作業者2人以下ごとに1人配置する。
(2)連絡員は、潜水作業者と連絡して、その者の潜降及び浮上を適正に行わせる。
(3)連絡員は、潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ及びコックの異常の有無を点検する。
(4)連絡員は、送気設備の故障その他の事故により、潜水作業者に危険又は健康障害の生ずるおそれがあるときは、速やかに潜水作業者に連絡する。
(5)連絡員は、ヘルメット式潜水器を用いて行う潜水業務にあっては、潜降直前に潜水作業者のヘルメットがかぶと台に結合されているかどうかを確認する。

潜水作業者への早期の調節は、特別の教育を受けた送気員が行う必要がある。
答えは(3)


問16 潜水作業者と連絡員とが通話することができる通話装置がない場合における、潜水作業者の携行物に関する次の文中の    内に入れるA及びBの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「空気圧縮機により送気して行う潜水業務を行うときは、潜水作業者に、 A 、水中時計、 B 及び鋭利な刃物を携行させなければならない。」
    A     B
(1)コンパス  水深計
(2)コンパス  浮上早見表
(3)浮上早見表 信号索
(4)信号索   水深計
(5)水深計   残圧計

送気式潜水は信号索、水中時計、水深計、鋭利な刃物が必要。
(ただし通話装置を携行している場合は信号索、水中時計、水深計は必要ありません。)
答えは(4)


問17 潜水業務に常時従事する労働者に対して行う高気圧業務健康診断において、法令上、実施することが義務付けられていない項目は次のうちどれか。
(1)既往歴及び高気圧業務歴の調査
(2)四肢の運動機能の検査
(3)血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋自の有無の検査
(4)視力の測定
(5)肺活量の測定

義務付けられている健康診断の項目は次の6つです。
1、既往歴及び高気圧業務歴の調査
2、関節、腰若しくは下肢(し)の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査
3、四肢(し)の運動機能の検査
4、鼓膜及び聴力の検査
5、血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋(たん)白の有無の検査
6、肺活量の測定
答えは(4)


問18 再圧室に関し、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
(1)水深10m以上の場所における潜水業務を行うときは、再圧室を設置し、又は利用できるような措置を講じなければならない。
(2)再圧室を使用するときは、再圧室の操作を行う者に加圧及び減圧の状態その他異常の有無について常時監視させなければならない。
(3)再圧室は、出入に必要な場合を除き、主室と副室との間の扉を開じ、かつ、副室の圧力は主室の圧カよりも低く保たなければならない。
(4)再圧室を使用したときは、その都度、加圧及び減圧の状況を記録しておかなければならない。
(5)必要のある者以外の者が再圧室を設置した場所及び再圧室を操作する場所に立ち入ることを禁上し、その旨を見やすい箇所に表示しておかなければならない。

直ぐに使用できるよう、主室と副室の圧力は同じにしておく必要がある。
答えは(3)


問19 潜水士免許に関し、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
(1)免許証を他人に譲渡し、又は貸与したときは、免許を取り消されることがある。
(2)重大な過失により、潜水業務について重大な事故を発生させたときは、免許を取り消されることがある。
(3)免許証の交付を受けた者で、潜水業務に現に就いているもの又は就こうとするものは、免許証を滅失し、又は損傷したときは、免許証の再交付を受けなければならない。
(4)免許証の交付を受けた者で、潜水業務に現に就いているもの又は就こうとするものは、氏名を変更したときは、免許証の書替えを受けなければならない。
(5)免許証再交付申請書又は免許証書替申請書は、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

再交付は労働基準監督署ではなく、都道府県労働局長から受ける
答えは(5)


問20 潜水作業において一定の範囲内に収めなければならないとされている、潜水作業者が吸入する時点のガス分圧に関し、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
(1)酸素の分圧は、18kPa未満であってはならない。
(2)酸素の分圧は、原則として160kPaを超えてはならない。
(3)窒素の分圧は、400kPaを超えてはならない。
(4)ヘリウムの分圧は、400kPaを超えてはならない。
(5)炭酸ガスの分圧は、0.5kPaを超えてはならない。

窒素の最大分圧は400kPaであり、ヘリウムは窒素よりも窒素酔いになりにくい特性がある。
答えは(4)